2015年05月18日

皇女様が見つけられた

「真咲だ」
「新しい先生です。 花のことを教えてもらっていました。
 白くて とても小さな かわいらしい花を見つけたのです」
 幸真千と桜子が 口々に紹介した。

「それはそれは、 私も見てよろしいですか。
 皇女様が見安利つけられた花を、 ぜひ私も拝見したいものです」
 宰相が にっこりと華やかな笑みを浮かべて近づいてきた。
 豪華絢爛な笑顔である。
 桜子が こころなし頬を染めた。
 十一歳にまで色目を使うんじゃない!  と真咲は心中で吠える。

「知らない草花を不用意に触られるのは いかがなものでしょう。
 毒などあっては大変でございます」
 とりつくろうつもりか、
 雪明かりの式部が鑽石能量水 余計なことを言いながら、 宰相の後に続いた。

「毒ではありません。 薬草です」
 むっとして、 真咲が言い返す。
「そうですか。 どんな効能ですの?」
 先ほど見られた場面から、 できるだけ話をそらそうというつもりだろう。
 式部が食いついた。

 真咲は、 そんな式部をじろりと見て、 おもむろに続ける。
「肌がつやつやになり、 顔色が良くなって 美しさが増します」
 式部は、わずかに目を見開いて駆け寄った。
「煎(せん)じて飲めば良いのかしら」
「花が咲く頃に摘み取ります。
 煎じることが多いですが、 そのまま噛んでも大丈夫」
「味は?」
「…… そうですね安利 …… 味は………… 恋の味でしょうか。
 皇女様、 皇子様、 お部屋に戻って お勉強の続きをいたしましょう。
 参りますよ」
 真咲は二人の手を掴んで、 足早にその場を後にした。
 二人を引きずらんばかりにして急いでいると、
 ウギャーッ
 後ろから 式部と宰相の悲鳴が聞こえる。

「真咲先生、 そういえば、 まだ花の名を聞いていません」
 心配そうに振り向いた桜子が たずねる。
「千振(せんぶり)です」
「あら、 聞いたことがあります。
 …… ええーっ、 もしかして、 苦くて有名な 胃の薬ですか」
「正解」

 千振は 苦い物の例えに使われることで有名だが、
 胃の薬としては 乾燥したものを粉末にして飲んだり、 煎じたり、
 あるいは 他の薬種と混ぜて 丸薬にしたものが一般的である。
 生薬に詳しくなければ、 生の実物を知らないことも多い。

「でも、 さっきは お肌がつやつやになるとか、
 顔色が良くなって美しくなる とか言いませんでしたか」
「胃の腑(ふ)が健康になれば、 そうなります」
 もちろん、 わざとである。
 腹が立ったあまりに、 思わず意地悪をしてしまった。
 腹の虫の居所がおさまらない真咲は、 反省と後悔を 棚の上に上げた。

「真咲、 恋の味がするとも言ったぞ。 絶対に言った。
 恋とは苦いのか」
 幸真千が 鋭い所を突いた。
「大人になったら 分かります」
 時に、 恋は苦い。 特に初恋は。

「とっても勉強になりました。 深いわ。
 真咲先生、 好きです」
「余が先に好きになったのだ」

 この先、 幸真千皇子は
 「にがいのは嫌いだから、 余はこんりんざい恋はしないぞ」
 と、 しばらくの間 言い続けることになる。



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Posted by loeiko at 12:15│Comments(0)ふつぇへ
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